ご自身の体が、手術後の回復のどの段階にあるのか?
そして、退院後はいつまで通院を続ければいいのか?
これは、多くの方が気になるところではないでしょうか。
退院後に体のケア目的で通院されている方の中には、
「もう少し通った方がいいのかな?」
「もう卒業してもいいのかな?」
と迷っている方も少なくありません。
この記事では、病院や整体院で手術後のフォローを行ってきた私が、回復の段階や通院終了のタイミングについてわかりやすく解説します。
ご自身の回復ペースを知り、安心して次のステップへ進むための参考にしてみてください。
【手術後の回復曲線】

手術後の体の状態は、「健康」「不調」「軽度」「重度」の4段階に分けて考えることができます。
健康:日常生活や仕事を難なくこなせる状態
不調:日常生活は送れるが、仕事や趣味などで活動量が上がると不調が出始める状態
軽度:日常生活に支障を感じる状態
重度:手術を要するほどの障害がある状態
退院時点では、多くの方が「重度」の段階を乗り越え、リハビリを通して「健康」から「不調」レベルまで回復しています。
そして、退院後の生活の中で、回復曲線は大きく2つの方向に分かれていきます。
1つは、体の状態が安定し、「健康」な生活を維持できるケースです。
この場合は、日常生活や仕事、趣味(旅行やスポーツなど)も無理なく行えるようになります。
もう1つは、退院後に体調が徐々に崩れ、「不調」から「軽度」へと戻ってしまうケースです。
こうした場合には、退院後も定期的に通院やメンテナンスを続けることが大切です。
しかし、継続して通院されている方からは、よくこんな質問をいただきます。

「いつまで通院を続ければいいのですか?」
次の章では、その疑問に対して、私のこれまでの臨床経験からお伝えしていきます。
【いつまで通院すればいいの?】

私が考える通院の目安は、「健康な状態を3か月間維持できたら卒業」です。
3か月間、安定して健康な状態を保てれば、体はその良い状態を「形状記憶」し、再び崩れにくくなります。
しかし現実には、多くの方が退院後に不調を感じやすく、思うように健康状態を維持できないことがあります。
その理由として、私は次の3つの原因が大きく関係していると考えています。
以下で、退院後に不調を感じやすい3つの原因について解説していきます。
① 自宅生活に戻り活動量が急に増える
入院中は、基本的にリハビリ以外はベッド上で過ごし、食事や入浴の準備などもスタッフに任せることが多いでしょう。
ところが退院後は、家事や買い物、仕事への復帰など、活動量が一気に増えます。
体がその変化に追いつけないと、筋肉や関節に負担がかかり、不調が再発しやすくなります。
② 手術部位以外の問題が残っている
たとえば膝の手術をした場合、膝の痛み自体は改善しても、手術をするに至った「原因」を解消できていないことがあります。
膝に負担がかかる姿勢や歩き方、股関節や足首の硬さ、筋力バランスなどがそのままだと、また膝や他の部位に痛みが出てしまうのです。
つまり、「膝が悪かった原因」を取り除かない限り、再発や別の痛みにつながるということです。
手術の後は、局所だけでなく全身のバランスを整えていくことがとても大切です。
③ 不安が姿勢を崩し体を硬くしてしまう
退院後に少しでも痛みや違和感が出ると、「私の体、大丈夫かな…」と不安になる方も多いでしょう。
この心理的な不安が、実は姿勢を悪化させる大きな要因になります。
不安を感じると、自然と猫背になりやすく、胸やお腹が潰れて呼吸も浅くなります。
すると体の可動性が失われ、ますます体が硬く、動きづらくなってしまいます。
手術部位はもともと動きが制限されやすい部分です。
そこに姿勢の崩れや体の硬さが加わると、心身のバランスが乱れ、不調の波が繰り返しやってくることになります。
【退院後の体のメンテナンスがとても重要】

服にたとえると、手術後の体は「つぎはぎをした服」のような状態です。
新品の服と比べると、つぎはぎの部分は破れやすく、ほつれやすくなっています。
さらに、手術が必要なほどの体というのは、ほかの部分の生地もすでに擦れていて、どこが破れてもおかしくない状態にあります。
つまり、手術を要する体とは、全体的にダメージを受けやすく、再び壊れやすい状態だということです。
ところが実際には、その「つぎはぎの服(体)」を乱暴に扱ってしまう方が少なくありません。
無理な姿勢で仕事をしたり、休息を取らずに動き続けたり、体をいたわらずに過ごしてしまう…。
本人にとっては「いつも通り」でも、その積み重ねが再び体を傷める原因になります。
ここで大切なことをお伝えします。
服は買い替えることができますが、人の体は一生ものです。
たとえ少しボロボロでも、使い続けていかなければなりません。
だからこそ、できるだけ再手術が必要にならないように、定期的なメンテナンスがとても大切です。
手術を経験した体であれば、なおさら意識してケアを続けることで、再び不調や障害を抱えないようにできます。
【まとめ】
手術を経験した方ほど、体のメンテナンスは欠かせません。
目安としては、少なくとも3カ月間、安定した健康状態を維持できることが望ましいです。
また、体のメンテナンスでは、手術をした「部分」だけに注目するのではなく、全身を総合的に整えることが重要です。
手術に至った根本的な原因や、手術後に現れる新たな不調の要因を見極め、体全体のバランスを整えていく必要があります。
あなたの体は、一生使い続ける「大切な服」です。
新品のように買い替えることはできません。
だからこそ、年を重ねるごとに、丁寧に手入れをしながら長く着続けられるように、体も大切に扱っていきましょう。

